「2025年の崖」は本当に崖なのか——基幹システム放置の経営リスクを試算する

「2025年の崖」は本当に崖なのか——基幹システム放置の経営リスクを試算する
目次
  1. 「2025年の崖」の試算は何を根拠にしていたか
  2. 2026年時点の実態:崖は緩やかな坂になっている
  3. 経営が今見るべき3つの兆候
  4. 段階的な対応という選択肢
  5. FAQ
  6. まとめ

経済産業省が2018年のDXレポートで警鐘を鳴らした「2025年の崖」——基幹システムを放置した場合、2025年以降に最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じるという試算です。2026年になった今、この崖は本当に企業を突き落としたのでしょうか、それとも警鐘倒れだったのでしょうか。本記事では、基幹システム放置のリスクを経営がどう捉えるべきかを整理します。

「2025年の崖」の試算は何を根拠にしていたか

結論:「崖」という表現は、ある日突然損失が発生するという意味ではなく、複数のリスクが同時に積み重なる時期を指した警鐘でした。

経済産業省のDXレポートでは、2025年に導入から21年以上が経過した基幹系システムが約6割に達し、基幹システムの保守を担う人材の不足も深刻化すると試算されていました。老朽化・人材不足・ブラックボックス化という複数の要因が同じ時期に重なることで、システム障害やデータ滅失などのリスクが高まり、結果として最大12兆円/年の経済損失につながる、という論理構成です。

2026年時点の実態:崖は緩やかな坂になっている

結論:多くの企業にとって「崖」は一度に転落するものではなく、対応の遅れが少しずつ積み上がる「緩やかな坂」として現れています。

2026年時点でも、DXに本格着手できていない、あるいは散発的な取り組みにとどまっている企業は依然として多いとされています。突発的な大規模障害という形で崖から転落した企業は限定的ですが、保守費用の高騰、エンジニア不足、新しいビジネスチャンスの喪失という形で、じわじわと競争力を削られている企業は少なくありません。「崖から落ちなかったから大丈夫」ではなく、「坂を上り続けるコストが年々増えている」と捉える方が実態に近いといえます。

経営が今見るべき3つの兆候

結論:保守要員の高齢化、仕様書の散逸、障害復旧時間の長期化という3つの兆候が重なったら、対応を先送りできる段階ではありません。

兆候見るべきポイント
保守要員の高齢化特定の担当者しか触れないシステムが残っていないか
仕様書の散逸仕様書が最新化されず、実際の挙動と乖離していないか
障害復旧時間の長期化障害発生時に復旧までの時間が年々伸びていないか

これらは一つひとつは小さな兆候に見えますが、3つが揃った状態で放置すると、いざという時の対応コストが急激に跳ね上がります。

段階的な対応という選択肢

結論:基幹システムへの対応は「全面刷新」と「放置」の二択ではなく、段階的なモダナイゼーションという中間の選択肢があります。

全面的なシステム刷新は投資額も期間も大きく、経営判断のハードルが高いものです。一方で、AIによる仕様書の復元・コード解析といった技術を活用しながら、保守体制を補完しつつ段階的に移行する進め方であれば、投資を分散させながらリスクを下げていくことができます。当社は基幹システムの保守引き取りからCOBOL資産の維持体制構築まで対応しており、全面刷新を前提としない段階的な対応も選択肢として提示しています。

COBOL資産の具体的な維持・段階移行の進め方についてはIDS ベトナムオフショア開発で詳しく扱っています。

FAQ

Q. 「2025年の崖」はもう過ぎたので対応しなくてよいですか。

特定の年に一度だけ発生するリスクではなく、対応の遅れが積み重なるほどコストが増える性質のものなので、対応の必要性は変わりません。

Q. 基幹システムの全面刷新をする予算がありません。どうすればよいですか。

全面刷新以外に、保守補完や段階的なモダナイゼーションという選択肢があります。まず自社の兆候(保守要員の高齢化・仕様書の散逸・障害復旧の長期化)を確認することから始めるとよいでしょう。

Q. 基幹システムの保守要員が一人しかいません。何から手をつけるべきですか。

まず属人化している業務知識をドキュメント化することが最優先です。AIによる仕様書復元などの技術を活用すると効率化できる場合があります。

まとめ

「2025年の崖」は一度に転落するものではなく、対応の遅れが積み重なる緩やかな坂として多くの企業に現れています。保守要員の高齢化・仕様書の散逸・障害復旧時間の長期化という3つの兆候を確認し、全面刷新にこだわらず段階的な対応を検討することが、現実的な次の一歩になります。

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