業務のAI活用 ・ 2026.10.13

管理部門のAI活用事例10選|総務・人事・経理・法務の活用例

管理部門のAI活用事例10選
目次
  1. 管理部門でAI活用が進んでいる背景
  2. 総務のAI活用事例
  3. 人事・労務のAI活用事例
  4. 経理のAI活用事例
  5. 法務のAI活用事例
  6. 10事例に共通するAI活用の成功ポイント
  7. 当社アイディーエスでの活用事例
  8. よくある質問(FAQ)
  9. まとめ

「AIを活用したいが、ほかの会社が管理部門のどの業務にAIを使っているのか分からない」「自社でも取り入れられそうな事例を参考にしたい」。

総務・人事・経理・法務などの管理部門では、こうした声が増えています。生成AIやAIエージェントの普及により、バックオフィスでのAI活用は、問い合わせ対応や書類作成、データの照合など、日々の定型業務へと広がっています。

結論からお伝えすると、管理部門でAIを活用する際は、「AIが準備し、人が判断する」という役割分担が重要です。業務のすべてをAIに任せるのではなく、手順が決まった作業をAIが担い、判断や最終確認は人が行う形です。

この記事では、管理部門で取り入れやすいAI活用パターンを、総務・人事・経理・法務の部門別に10例紹介します。

各事例では、「課題」「AIの役割」「人の役割」「期待できる効果」を整理しています。自社の業務と照らし合わせることで、「どの業務ならAIを活用できそうか」「どこまでAIに任せて、どこから人が確認するのか」を具体的にイメージできます。

なお、10例は管理部門で活用しやすい代表的なパターンをまとめたもので、後半では当社アイディーエスで実際に運用しているAI活用事例も紹介します。

「自社でもAIを活用したいが、どの業務から始めればよいか分からない」という方は、自社の業務に近い事例からご覧ください。

管理部門でAI活用が進んでいる背景

帝国データバンクが2026年3月に全国10,312社を対象に実施した調査では、生成AIを業務で活用している企業は34.5%でした。活用している企業の86.7%が「効果があった」と回答しており、AIを業務に取り入れる動きは着実に広がっています。

一方で、活用上の課題の上位には「活用すべき業務範囲の不明確さ(40.0%)」が挙がっています。AIに関心はあっても、「自社のどの業務に使えばよいのか」が分からず、最初の一歩を踏み出せない企業が少なくありません。

管理部門には、問い合わせ対応、申請の受付、書類の作成、データの照合など、AIを活用しやすい業務が多くあります。実際にAIを導入している企業では、こうした業務から取り組みを始めているケースが少なくありません。

ほかの会社がどの業務にAIを使い、人とどのように役割を分けているのかを知ることが、自社で活用する業務を見つける近道になります。

なお、紹介する業務のすべてにAIが必要なわけではありません。決まった条件で処理できる作業は、通常の業務システムや自動化ツールで対応できる場合もあります。AIは、書類の読み取りや文章の作成、例外的な内容の整理など、従来の自動化だけでは対応しにくい作業に活用すると効果的です。

RPAなどの自動化ツールとAIエージェントの使い分けは、以下の記事で解説しています。

ここからは、部門ごとに代表的なAI活用事例を見ていきます。

総務・人事・経理・法務のAI活用事例一覧

総務のAI活用事例

総務のAI活用事例では、社内からの問い合わせや申請の受付など、「社内の依頼に応える業務」が中心です。件数が多く、対応の手順も決まっているため、AIとの相性が良い分野です。

① 社内問い合わせへの回答

項目内容
課題「経費精算の締め日は?」「慶弔休暇は何日?」など、規程や手続きに関する同じ質問が繰り返し届き、担当者の作業がたびたび中断される
AIの役割社内規程やマニュアルを参照して回答を作成し、根拠となる規程の該当箇所を添えて返信する。判断が必要な質問は担当者へ引き継ぐ
人の役割規程やマニュアルの更新、AIが答えられなかった質問への対応、回答内容の定期的な確認
効果定型的な問い合わせへの対応時間を減らし、担当者は個別の相談や判断が必要な業務に時間を使いやすくなる

ポイントは、AIが答える範囲を「規程やマニュアルに書かれていること」に限定することです。書かれていない内容や個別の事情が絡む質問は、無理に回答せず担当者へ引き継ぐことで、誤った案内を防げます。

② 各種申請の受付

項目内容
課題住所変更や備品購入などの申請で、記入漏れや添付書類の不足が多く、確認と差し戻しのやり取りに手間がかかる
AIの役割必須項目の入力漏れや添付書類の有無は業務システムで、記載内容の不備はAIで確認し、不備があれば申請者へ修正を依頼する。必要な情報がそろった申請は一覧に登録し、承認者へ回す
人の役割申請の承認、ルールに当てはまらない申請への対応
効果差し戻しの往復を減らし、担当者は内容のそろった申請の確認や判断に集中しやすくなる

申請のチェックは、「必須項目が埋まっているか」「必要な書類が添付されているか」というルールで判断できるため、AIに任せやすい作業です。承認そのものは人が行うため、AIの判断で申請が確定することはありません。

③ 議事録の作成・共有

項目内容
課題会議のたびに議事録の作成に時間がかかり、共有が遅れる。決まった宿題や担当者が曖昧なまま進んでしまう
AIの役割会議の録音や文字起こしから、要点・決定事項・担当者と期限を整理した議事録の下書きを作成し、参加者へ共有する
人の役割下書きの内容確認と修正、社外秘の情報を共有してよいかの判断
効果議事録作成にかかる時間を減らし、会議後の共有を早めやすくなる。決定事項や担当者、期限の抜け漏れ防止にもつながる

議事録の作成は、AIが下書きを作り、人が確認してから共有する流れが基本です。特に決定事項や期限は、会議の参加者が必ず確認するようにしておくと安心です。

人事・労務のAI活用事例

人事・労務のAI活用事例では、入退社の手続きや勤怠の確認など、「ルールに沿って進める手続き業務」が中心です。従業員の個人情報を扱うため、AIに任せる範囲と人が確認する範囲を明確に分けることが重要です。

④ 入退社手続きの案内

項目内容
課題入社・退社のたびに、必要書類や手続きの案内、提出状況の確認が発生し、案内漏れや回収漏れが起きやすい
AIの役割入社日や雇用形態などの情報をもとに、必要書類の一覧と案内文を作成する。提出状況を確認し、未提出の書類があれば期限前のリマインドにつなげる
人の役割提出された書類の内容確認、個別の事情がある手続きへの対応
効果案内漏れや回収漏れが減り、担当者は書類の確認と個別対応に集中できる

必要書類は雇用形態や家族構成などによって変わりますが、その判断はあらかじめルールとして整理できます。ルールに当てはまらないケースだけを担当者が対応する形にすると、運用が安定します。

⑤ 勤怠データのチェック

項目内容
課題月末の締め作業で、打刻漏れや基準を超える残業を目視で確認しており、時間がかかるうえに見落としも発生する
AIの役割あらかじめ決めたルールに沿って勤怠データを確認し、打刻漏れや、あらかじめ設定した基準に近づいている残業などの異常値を抽出する。該当する本人や上長へ確認を依頼する
人の役割異常値の理由の確認と、修正や是正が必要かどうかの判断
効果締め作業の時間が短くなり、長時間労働の兆候にも早めに気づけるようになる

「打刻がない日」「残業が月○時間を超えている」といった基準は、数値でルール化できます。AIは異常値を見つけるところまでを担い、理由の確認や対応の判断は人が行います。

⑥ 各種証明書の発行

項目内容
課題在職証明書などの依頼が届くたびに、社内データを確認しながら証明書へ手作業で転記している
AIの役割依頼内容と人事データをもとに、証明書のひな形へ必要事項を記入し、PDFを作成する
人の役割記載内容の最終確認と、証明書の発行
効果1件あたりの作成時間を短縮し、転記ミスの防止につながる

証明書は社外へ提出される書類のため、発行前の最終確認は必ず人が行います。作成までをAIに任せ、確認と発行を人が担う形にすることで、スピードと正確さを両立できます。

経理のAI活用事例

経理のAI活用事例では、請求書の照合や経費精算のチェックなど、「データを突き合わせて確認する業務」が中心です。金額や証憑に関わる業務が多いため、AIに任せる範囲と人が確認する範囲を明確に分けることが重要です。

⑦ 請求書・見積書の照合と押印

項目内容
課題押印の前に、請求書や見積書の内容を受注データと突き合わせて確認する必要があり、月末に依頼が集中すると担当者の負担が大きくなる
AIの役割書類の内容を読み取り、金額・取引先・件名などを受注データと照合する。一致していれば押印対象として処理し、差異があれば担当者へ報告する
人の役割差異があった書類や、想定外の様式の書類の確認
効果通常の依頼にかかる確認作業を減らし、担当者は差異のある書類や判断が必要な書類の確認に集中しやすくなる

照合する項目と「一致しているか」という判断基準が明確なため、AIに任せやすい業務です。差異があった場合は処理を止めて人へ報告する設計にしておくことで、誤った書類が社外へ出ることを防げます。

⑧ 経費精算のチェック

項目内容
課題経費精算の申請ごとに、領収書の有無や金額の上限、勘定科目が正しいかを確認しており、時間がかかる
AIの役割社内の経費規程に照らして申請内容を確認し、不備があれば申請者へ差し戻す。問題のない申請は承認待ちの一覧に回す
人の役割申請の承認と、規程だけでは判断できないケースの確認
効果確認にかかる時間を短縮し、チェック基準を担当者間でそろえやすくなる

経費規程は「上限額」「必要な証憑」「科目の選び方」などのルールとして整理されていることが多く、AIでの確認に向いています。判断に迷う申請は人へ回すことで、規程の運用をそろえながら柔軟な対応も残せます。

⑨ 紙・PDF帳票のデータ化

項目内容
課題取引先から届く紙やPDFの請求書・注文書を、担当者がシステムへ手入力しており、入力時間と入力ミスが課題になっている
AIの役割AI OCRで帳票を読み取り、取引先名・日付・金額などの項目をデータ化して、システムへ登録できる形に整える
人の役割読み取り結果に自信がない項目や、見慣れない様式の帳票の確認
効果手入力の時間を削減しやすくなり、転記ミスの防止につながる

帳票の様式は取引先ごとに異なりますが、読み取る項目はある程度決まっています。読み取りの精度が低い項目だけを人が確認する運用にすると、効率と正確さを両立しやすくなります。

法務のAI活用事例

法務のAI活用事例では、契約書の確認など「自社の基準と照らし合わせる業務」が代表的です。最終的な判断には法的な知識と責任が伴うため、AIは確認の初動を支える役割を担います。

⑩ 契約書の一次チェック

項目内容
課題取引先から届いた契約書を、自社のひな形や基準と照らし合わせて確認するのに時間がかかり、確認が後回しになりやすい
AIの役割自社のひな形やチェックリストと比較し、基準と異なる条項や注意が必要な条項を抽出して一覧にする
人の役割抽出された条項の受け入れ可否の判断と、取引先との交渉
効果確認の初動が早くなり、条項の確認漏れの防止にも役立つ

AIが担うのは「どこが基準と違うか」を示すところまでです。その違いを受け入れるかどうかは、取引の背景や相手との関係を踏まえて人が判断します。

10事例に共通するAI活用の成功ポイント

AIが準備し、人が判断する役割分担を示した図

10の事例は部門も業務もさまざまですが、AIを業務に取り入れる際には共通する考え方があります。それが、「AIに任せる範囲と人が判断する範囲を分けること」です。AIに任せる業務を判断する「3つの基準」で整理すると、次のようになります。

基準10事例に共通すること当てはまる事例
① 手順の定型性手順が決まっている作業をAIに任せやすい社内問い合わせへの回答、勤怠データのチェック、紙・PDF帳票のデータ化
② 判断の重さAIは準備や下書きまでを担い、判断は人が行う各種申請の受付、経費精算のチェック、契約書の一次チェック
③ 間違えたときの影響結果が確定する前に、人の確認を置く各種証明書の発行、請求書・見積書の照合と押印、議事録の作成・共有

どの事例も、業務のすべてをAIに任せているわけではありません。手順が決まった作業をAIが担い、判断や最終確認を人が行うという役割分担が、成果につながっています。

自社の業務でも、この3つの基準に当てはめて考えると、「どの作業をAIに任せるか」「どこで人が確認するか」を整理しやすくなります。基準の詳しい使い方と、総務・人事・経理・法務・情報システムの業務一覧は、以下の記事で解説しています。

当社アイディーエスでの活用事例

AIが3つのシステムの売上・原価を突き合わせ、理由が分からない差異だけを人が確認する流れ

ここでは、当社アイディーエスで実際に運用しているAI活用事例をご紹介します。

売上・原価の整合性チェック

当社では、毎月の売上と原価の数字が、販売管理システム・会計システム・分析用の集計ツールの3つで一致しているかを確認する業務に、AIエージェントを活用しています。

従来は、経理の担当者が毎月それぞれのシステムからデータを出力し、表計算ソフトで部門ごとの数字を突き合わせていました。3つのシステムで数字の持ち方が少しずつ異なるため、差異が見つかるたびに原因を調べる必要があり、月次の締め作業の中でも負担の大きい業務でした。

現在は、毎月決まった日に販売管理システムと会計システムのデータを自動で取得します。分析用の集計ツールのデータは担当者が用意し、実行の指示を出すと、AIエージェントが3つのシステムの数字を部門ごとに突き合わせます。結果はSlackで管理部門へ通知され、差異があった場合は、その内容と確認すべき明細が一覧で示されます。

突合の中で見つかる差異には、「交通費の扱いがシステムごとに異なる」「決算期をまたいで計上されている」など、理由が分かっているものもあります。こうした差異はルールとして整理し、「理由のある差異」として区別して報告するようにしました。人が確認するのは、理由が分からない差異だけです。

この業務も、3つの基準に当てはめると次のように整理できます。

基準3システム突合の場合
① 手順の定型性毎月同じ手順で、決まったデータを突き合わせる
② 判断の重さ「一致しているか」「理由が分かっている差異か」はルールで判断できる
③ 間違えたときの影響理由の分からない差異は人が確認してから、経営層へ報告する

手作業でのデータ出力や転記を減らし、担当者は差異の原因確認や例外対応に集中できるようになりました。確認漏れにも気づきやすくなり、月次の締め作業の負担軽減につながっています。

よくある質問(FAQ)

紹介された事例は、中堅・中小企業でも取り入れられますか?

取り入れられます。紹介した事例の多くは、問い合わせ対応や書類の確認など、企業の規模にかかわらず発生する業務です。 担当者の人数が限られている企業では、定型業務にかかる負担を減らすことで、限られた人員をより重要な業務に振り向けやすくなります。まずは件数が多く、手順が決まっている業務を1つ選んで始めるのがおすすめです。

10の事例のうち、どれから始めるのがよいですか?

自社で「手順が決まっている」「判断が比較的シンプル」「間違えても確認でカバーできる」業務に近い事例から始めるのがおすすめです。 例えば、社内問い合わせへの回答や勤怠データのチェック、経費精算のチェックは、社内で完結し、人が確認しながら進められるため、最初の1業務として取り組みやすい事例です。 最初の1業務の選び方は、関連記事「AI導入はスモールスタートが正解|最初の1業務の選び方と進め方」で詳しく解説しています。

個人情報や機密情報を扱う業務でも、AIを活用できますか?

活用できます。ただし、利用するAIサービスのデータの取り扱いや契約条件を確認し、社内ルールや法令に沿って運用することが前提です。 入社手続きや証明書の発行など個人情報を扱う業務では、AIに入力する情報を必要な範囲に限定し、最終確認を人が行う運用をおすすめします。

AIを導入すると、管理部門の担当者の仕事はなくなりますか?

なくなるわけではありません。紹介した事例でも、AIが担っているのは定型的な確認や作成の作業で、判断や例外対応、最終確認は人が行っています。 AIに定型業務を任せることで、担当者は相談対応や改善の検討など、人にしかできない業務に時間を使えるようになります。

まとめ

  • 管理部門では、総務・人事・経理・法務など、さまざまな部門でAIを活用できる業務がある
  • 成果が出ている事例の多くは、「AIが準備し、人が判断する」という役割分担で運用されている
  • 10事例に共通するのは、「手順が決まった作業をAIに任せる」「判断は人が行う」「結果が確定する前に人が確認する」という考え方である
  • 自社の業務に近い事例を参考に、件数が多く手順が決まった業務から1つ選んで始めるとよい

AIエージェントは、人を置き換えるためだけのものではありません。人が行っている定型的な作業を補助・代行し、担当者が本来注力すべき判断や調整に時間を使えるようにするための仕組みです。

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