AIエージェントの運用・保守|作って終わりにしないための体制と進め方

目次
AIエージェントを業務に取り入れた管理部門では、しばらくすると「仕組みのことは作った人にしか分からない」「いつの間にか止まっていて、気づいたのは数日後だった」といった悩みが出てくることがあります。
AIエージェントは、一度作れば同じように動き続けるものではありません。連携しているシステムの画面や仕様、扱う書類の様式、社内の業務ルールは変わっていきます。担当者の異動や退職もあります。こうした変化に合わせて手を入れなければ、実際の業務とのずれが生じ、期待した処理ができなくなることがあります。
導入の効果を出し続けるには、作った後の運用・保守を最初から計画しておくことが大切です。特に重要なのは、止まったことに早めに気づけることと、担当者が替わっても続けられることの2つです。
本記事では、AIエージェントの運用で行うことと役割分担の決め方に加え、止まったときに気づいて復旧するまでの流れや、担当者が替わっても引き継げる記録の残し方も紹介します。
「AIエージェントを作ったが、この先どう管理すればよいか分からない」「担当者が1人しかおらず、不安がある」という方は、自社の運用体制を見直す参考にしてください。
なぜAIエージェントは作って終わりにできないのか
AIエージェントは、社内のシステムや書類、業務のルールを前提に動いています。その前提が変わると、仕組みが止まったり、誤った結果を出したりすることがあります。作った後に起きやすい変化は、次のとおりです。
| 起きやすい変化 | 仕組みへの影響の例 |
|---|---|
| 連携しているシステムの画面や仕様が変わる | データを取り出せなくなり、処理が途中で止まる |
| 扱う書類の様式が変わる | 取引先が請求書の様式を変え、必要な項目を読み取れなくなる |
| 社内の業務ルールが変わる | 承認の流れや締め日が変わり、仕組みの処理と実際の手順がずれる |
| AIモデルや外部サービスが更新される | 同じ指示でも、出力の内容や形式が変わることがある |
| 担当者が異動・退職する | 仕組みの中身が分からなくなり、止まっても直せなくなる |
こうした変化は、運用を続ける中で起こり得ます。大切なのは、変化が起きることを前提に、変化に気づき、必要なときに手を入れられる状態を保っておくことです。

総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」でも、AIのリスクに応じて、人間が適切に関与・監督することの重要性が示されています。AIエージェントを導入した後も、人が処理結果や動作状況を確認し、必要に応じて対応できる体制を整えておくことが大切です。
AIエージェントの運用・保守で行うこと
運用・保守といっても、特別な作業ばかりではありません。まずは「何をするのか」を整理しておくと、担当者の負担や必要な体制が見えてきます。
| 行うこと | 内容 | 頻度の目安 |
|---|---|---|
| 日々の確認 | 予定どおり動いたか、エラーが出ていないかを確認する | 毎日、または処理のたび |
| 例外への対応 | AIが処理できなかったものや、人の確認・修正が必要なものに対応する | 発生したとき |
| 定期的な点検 | 処理件数や修正・差し戻しの件数、処理結果に問題がないかを確認する | 月に1回など |
| 変更への対応 | 連携先の画面や書類の様式、業務ルールが変わったときに仕組みを見直す | 変更があったとき |
| 記録 | 処理結果、例外への対応、修正した内容を残す | 処理や対応、修正のたび |
このうち、日々の確認と例外への対応は、業務の担当者が日常の仕事の中で行えるようにしておくと、運用が続きやすくなります。ただし、確認する頻度は、仕組みが動く回数や業務への影響に応じて決めましょう。たとえば、毎日使う請求書処理の仕組みと、月に1回だけ使う集計の仕組みでは、適切な確認頻度が異なります。
一方、変更への対応は、仕組みの中身や連携先を理解している人でなければ難しい場合があります。誰が修正を担当するかをあらかじめ決め、修正後には想定どおりに処理できることを確認する必要があります。
定期的な点検では、実行回数や処理件数、人が修正した件数などの数字を確認します。数字の記録方法や効果の測り方については、以下の記事で詳しく解説しています。
運用体制の作り方|誰が何を担当するか
運用で行うことが整理できたら、次は「誰が担当するのか」を決めます。運用体制で大切なのは、仕組みを作った1人にすべてを任せないことです。役割を分けると、次のようになります。
| 役割 | 主な担当 | 担当する人の例 |
|---|---|---|
| 業務の担当者 | 日々の結果の確認、例外への対応、気づいたことの報告 | 実際にその業務を行っている管理部門の担当者 |
| 運用の担当者 | 定期的な点検、記録の取りまとめ、変更や問題の受付・報告 | 管理部門の中でAI活用を進める推進役 |
| 修正の担当者 | 仕組みの修正、修正後の動作確認 | 社内の情報システム担当者、または外部のパートナー |
| 責任者 | 対応の優先順位や、運用を続けるか一時停止するかの判断 | 管理部門の責任者 |

小さな組織では、1人が複数の役割を兼ねることもあります。その場合でも、仕組みの中身を把握している人を複数人にしておくと、担当者の異動や退職があっても引き継ぎやすくなります。社内で修正するのが難しい場合は、外部のパートナーに修正を依頼できる体制を整えておく方法もあります。
ただし、修正を外部に任せる場合でも、社内に状況を把握し、依頼や判断を行う窓口を決めておくことが大切です。
また、業務の担当者が「おかしい」と気づいたときに、誰へ伝えればよいかを決めておきましょう。連絡先や報告方法が決まっていないと、小さな異常が放置され、気づいたときには大きな手戻りになっていることがあります。
運用体制が決まらないまま導入を進めると、どのような失敗が起きやすいかは、以下の記事でも解説しています。
止まったことに気づき、復旧するまでの流れ
AIエージェントの運用で避けたいのは、止まっていることに誰も気づかない状態です。止まったときの対応は、「検知する」「原因を確認する」「復旧する」の3段階で考えます。
| 段階 | やること | 備えておくもの |
|---|---|---|
| 1. 検知する | 予定どおり実行されなかった、処理が途中で止まった、エラーが発生したことに気づく | エラー通知、実行予定と実績の記録 |
| 2. 原因を確認する | 連携先の変更、入力データの不備、設定の変更など、止まった原因を調べる | 処理の記録、最近の変更履歴 |
| 3. 復旧する | 原因に対処し、必要な確認をしたうえで再実行する | 手順書、停止中の業務を代替する手順 |

1. 検知する
検知の方法は、仕組みによって異なります。エラーが起きたときにチャットやメールへ通知する方法のほか、実行するたびに記録を残し、記録が途切れていないかを確認する方法もあります。
エラーの通知だけでは、そもそも実行されなかったことに気づけない場合があります。実行予定と実際の記録を照合する仕組みを用意しておくと、「いつもは毎日動いているのに、昨日から記録がない」といった異常にも気づきやすくなります。
2. 原因を確認する
止まった原因を調べるときは、処理の記録と最近の変更履歴が役に立ちます。「連携先のシステムが更新された」「取引先の請求書の様式が変わった」など、直前に起きた変化が原因になっていることがあります。
原因が分からないまま設定を変更すると、別の問題が起きる可能性もあります。記録を確認し、必要に応じて仕組みの修正を担当する人に調査を依頼しましょう。
3. 復旧する
原因に対処したら、正常に処理できることを確認します。再実行する前には、停止するまでにどこまで処理が進んでいたかを確認し、同じデータを重複して処理しないよう注意しましょう。たとえば、請求書の処理が途中で止まった場合に最初から再実行すると、すでに処理した請求書を二重に登録してしまうことがあります。また、止まっていた間に処理されなかったデータがないかも、あわせて確認しておきます。
すぐに復旧できない場合に備えて、止まっている間は人が手作業で対応する手順を決めておくと、業務への影響を小さくできます。
担当者が替わっても運用を続けられるようにする
仕組みが安定して動いていても、担当者が替わったときに中身が分からなくなれば、次に止まったときに直せません。担当者が替わっても運用を続けるには、次の記録を残しておきます。
| 残しておくもの | 内容 | 役に立つ場面 |
|---|---|---|
| 仕組みの説明 | 何のための仕組みか、何を入力し何を出力するか、どのシステムとつながっているか | 担当者が替わったときの引き継ぎ |
| 運用の手順書 | 日々の確認の仕方、例外への対応、止まったときの連絡先と対応手順 | 止まったとき、業務の担当者が替わったとき |
| 変更履歴 | いつ、何を、なぜ直したか | 止まった原因を調べるとき、同じ問題を繰り返さないため |
| 修正前の控え | 修正前の設定やプログラム、保存場所、元に戻す手順 | 修正後に不具合が出たときの復旧 |
修正前の控えは、どの時点のものかが分かるようにしておき、必要なときに元に戻せる状態にしておきます。設定を直接保存できない外部サービスを使っている場合は、設定の内容や変更の手順を記録しておく方法もあります。
記録は、完璧な文書を作ることよりも、修正のたびに少しずつ書き足していくことが大切です。後でまとめて書こうとすると、細かな経緯や理由が分からなくなってしまいます。
あわせて、仕組みを見直す時期も決めておきます。例えば3か月ごとに見直しの場を設け、処理件数や修正の履歴などをもとに、今の仕組みを続けるか、改善するか、対象を広げるかを判断します。見直しの頻度は、業務の重要度や処理の頻度に応じて調整しましょう。
見直しの結果、使わなくなった仕組みは、関連する業務やシステムへの影響を確認したうえで停止し、停止した日と理由を記録しておきます。使われていない仕組みが動き続けると、同じ処理を二重に行ったり、どちらの結果が正しいのか分からなくなったりする可能性があるためです。
見直しの時期の決め方や、対象を広げる進め方は、以下の記事で解説しています。
AIエージェントの運用・保守で注意したいこと
最後に、運用・保守で気をつけたい点を4つ紹介します。
1. 1人に任せきりにしない
仕組みを作った人が運用も修正もすべて担当していると、その人が不在のときに対応できません。役割を分け、仕組みの中身や対応手順を複数人で把握しておくことが大切です。
2. 記録を後回しにしない
忙しいときほど、修正だけして記録を残さないことが起きがちです。記録がないと、次に止まったときに原因を調べる手がかりがなくなります。修正と記録は、ひとまとまりの作業として扱いましょう。
3. アクセス権限や認証情報を定期的に確認する
AIエージェントが社内システムや外部サービスと連携している場合は、必要な権限だけが付与されているか、認証情報が適切に管理されているかを定期的に確認します。担当者の異動・退職や連携先の変更があったときは、不要になった権限を外し、ログインに使うIDやパスワードなどの認証情報を更新する必要がないかも確認しておきましょう。
4. 修正が続く場合は、原因と仕組みの選び方を見直す
画面の変更や書類の様式の違いなどで修正が続く場合は、まず原因を確認しましょう。設定や運用方法の見直しで解決できることもあれば、その業務に合った仕組みを選び直した方がよい場合もあります。
例えば、手順や条件が明確で、決まった操作を繰り返す業務にはRPAが向いている場合があります。一方、書類の内容を読み取ったり、状況に応じて処理を変えたりする業務では、AIエージェントが適している場合もあります。業務の特性に合わせて使い分けることが大切です。
RPAとAIエージェントの違いや使い分けの考え方は、以下の記事で解説しています。
よくある質問(FAQ)
AIエージェントの運用には、どれくらい手間がかかりますか?
仕組みの複雑さや、連携しているシステムの数、例外の多さによって変わります。日々の確認は短時間で済む場合もありますが、連携先の仕様変更などがあると、原因の調査や修正、動作確認に時間がかかることがあります。運用の手間を減らすには、日々の確認を業務の中に組み込み、特定の担当者だけに依存しない体制をつくることが大切です。
運用は誰が担当すべきですか?
日々の確認や例外への対応は、その業務を行っている担当者が担うのが自然です。一方、仕組みの修正は中身を理解している人でなければ難しいため、社内の情報システム担当者や外部のパートナーと役割を分けておきます。どちらの場合も、1人に任せきりにせず、仕組みの中身や対応手順を複数人で把握しておくことをおすすめします。
AIエージェントの運用・保守を外部に任せることはできますか?
できます。特に、仕組みの修正や動作確認は、外部のパートナーに依頼することで社内の負担を減らせます。ただし、日々の処理結果の確認や、業務ルールの変更を伝える役割は、社内に残しておくことが大切です。業務の変化に最初に気づけるのは、実際に業務を行っている社内の担当者だからです。また、外部に依頼する場合は、障害が起きたときの連絡先や対応範囲、復旧までの進め方もあらかじめ決めておきましょう。
AIエージェントが止まったとき、まず何をすればよいですか?
まずは、止まっている間の業務を人の手作業で進められるようにし、業務への影響を小さくします。そのうえで、処理の記録と最近の変更履歴を確認し、原因を調べます。原因に対処したら、再実行する前に処理済みのデータを確認し、重複処理を防ぎながら正常に動作することを確かめましょう。止まっていた間に処理されなかったデータがないかも確認します。
まとめ
AIエージェントの運用・保守では、次のポイントを押さえて進めましょう。
- 変化を前提にする:連携先の画面、書類の様式、業務ルール、担当者は変わることを前提に、必要なときに仕組みを見直せる状態を保つ
- 行うことと担当を分ける:日々の確認・例外への対応・定期的な点検・変更への対応・記録を整理し、1人に任せきりにしない
- 止まったときの流れを決めておく:検知する・原因を確認する・復旧するという3段階と、停止中に人が対応する手順を用意する
- 記録を残し続ける:仕組みの説明・手順書・変更履歴・修正前の控えを、修正のたびに更新する
AIエージェントは、人を置き換えるためだけのものではありません。人が行っている定型的な作業を補助・代行し、担当者が本来注力すべき判断や調整に時間を使えるようにするための仕組みとして活用できます。
作った仕組みの効果を出し続けるために、まずは今動いている仕組みについて、「止まったら誰が気づくか」「担当者が替わったら誰が対応できるか」を確かめるところから始めてみてください。
「作ったAIエージェントの運用体制を見直したい」「運用や保守まで相談できる相手を探している」という方は、お気軽にお問い合わせください。業務の棚卸しから仕組みの立ち上げ、導入後の運用・保守までご支援いたします。
参考資料
- 総務省・経済産業省「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日):https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/ai_shakai_jisso/pdf/20260331_1.pdf
