業務のAI活用 ・ 2026.10.17

管理部門のAI活用ロードマップ|1業務から広げる3段階の作り方

管理部門のAI活用ロードマップ
目次
  1. なぜ管理部門にAI活用ロードマップが必要なのか
  2. ロードマップを作る前に整理する3つのこと
  3. AI活用ロードマップの作り方5ステップ
  4. 1業務から広げる3段階のロードマップ例
  5. 当社アイディーエスでのAI活用の広げ方
  6. ロードマップが形骸化しないための注意点
  7. よくある質問(FAQ)
  8. まとめ

AI導入を進めている管理部門では、「最初の1業務は動き始めたけれど、次に何をすればよいか分からない」という悩みが出てきます。

前の記事では、最初の1業務を選ぶ3つの条件と、4週間で始める進め方を紹介しました。1つの業務で運用が回り始めたら、次はその経験をほかの業務へどう広げていくかを考える段階です。

ただし、「便利だったから、次の業務にも」と思いつきで対象を増やしていくと、担当者ごとに進め方がばらばらになったり、導入の効果を社内に説明できなくなったりします。

そこで必要になるのが、管理部門のAI活用ロードマップです。どの業務を、どの順番で、いつ頃までに広げるのかを整理しておけば、1業務で作った型を次の業務に活かしながら、計画的にAI活用を進められます。

本記事では、ロードマップを作る前に整理すること、作り方の5ステップ、1業務から広げる3段階の例に加え、当社でのAI活用の広げ方も紹介します。

「最初の1業務の次に何をすればよいか分からない」「AI活用を計画的に進めたい」という方は、自社のロードマップを考える際の参考にしてください。

なぜ管理部門にAI活用ロードマップが必要なのか

1つの業務でAIを使い始めることと、組織としてAI活用を広げていくことは、別の取り組みです。最初の1業務は担当者の工夫で進められても、対象を広げる段階では「次はどの業務に取り組むのか」「誰が進めるのか」「効果をどう確認するのか」を組織として決める必要があります。

総務省の「令和8年版 情報通信白書」によると、生成AIの利用を禁止している企業を除いた調査で、日本企業の27.0%が生成AIによる業務変革などについて「組織的な取り組みはない」と回答しています。この割合は、米国(1.4%)、ドイツ(4.9%)、中国(2.6%)と比べて高い結果です。また、ほかの3か国では、取り組みを推進する部署や責任者を明確にしたり、経営幹部が各部署に実施事項や達成目標を示したりする企業も見られます。詳しくは、総務省「令和8年版 情報通信白書」を参照してください。

生成AIの活用に組織的な取り組みがない企業の割合を日本・米国・ドイツ・中国の国別で比較した棒グラフ

AIを使う企業が増えても、活用が個人や一部の業務にとどまっていると、成果やノウハウが組織全体に広がりにくくなります。ロードマップがない状態では、次のような問題が起きやすくなります。

ロードマップがない状態起きやすいこと
次に取り組む業務が決まっていない明確な選定基準がないため、担当者の要望やその場の判断で対象が決まり、効果の大きい業務が後回しになる
進め方が担当者ごとに違う1業務目で作った型が引き継がれず、毎回ゼロから検討することになる
効果を記録していない社内に成果を説明しにくくなり、予算や協力を得ることも難しくなる
ルールが後追いになる対象を増やしてから情報の扱いや確認手順を決めることになり、手戻りが発生する

ロードマップは、こうした状態を防ぐための「広げ方の設計図」です。最初から細かい計画を作り込む必要はありません。次にどの業務に取り組み、どのように進め、効果をどう確認するのかを関係者で共有することが大切です。

1業務から広げる管理部門のAI活用ロードマップの3段階

ロードマップを作る前に整理する3つのこと

ロードマップを作り始める前に、計画の前提となる3つのことを整理しておきます。ここが曖昧なまま計画を立てると、作ったロードマップが現場の実態と合わなくなる可能性があります。

整理すること確認する内容整理しておく理由
① 業務管理部門にどんな業務があり、それぞれ月に何件・どのくらいの時間がかかっているかAI活用を広げる候補を比べる材料になる
② 目標AI活用で何の時間を減らしたいのか、空いた時間を何に使いたいのか業務の優先順位や効果の測り方を検討できる
③ 体制誰が推進し、誰が判断し、現場の誰が協力するのか。社内ルールはあるか対象を広げても、役割分担や確認の手順を統一できる

① 業務:まずは全体を見える化する

最初の1業務を選んだときは、候補を数件に絞って比べれば十分でした。一方、ロードマップを作るときは、管理部門にどのような業務があるのかを、できるだけ広く把握することが大切です。

まずは総務・人事・経理・法務・情報システムなど、部門ごとに定型業務を書き出し、件数と作業時間の目安を添えておきます。これにより、次にAI活用を広げる候補を比べやすくなります。

正確な数字でなくても構いません。担当者の感覚で「月に何件くらい」「1件何分くらい」と見積もるだけでも、業務量の傾向をつかめます。最初から完璧な一覧を作ろうとせず、把握できる範囲から始めましょう。

② 目標:何のためにAIを使うのかを決める

「AIを導入すること」自体を目標にすると、何をもって成功とするのかが決まりません。「月末の照合作業を減らし、締めを早める」「問い合わせ対応の時間を減らし、制度の見直しに時間を使う」のように、減らしたい作業と、空いた時間で取り組みたいことを言葉にしておきます。

目標が明確になれば、どの業務を優先するのかを考えやすくなります。あわせて、作業時間や処理件数など、目標の達成度を何で測るのかも検討しておきましょう。

③ 体制:推進役と社内ルールを決める

AI活用を広げる段階では、推進役や関係者の役割を決めておくことが欠かせません。推進役は、各業務の担当者と一緒に対象業務や進め方を整理し、必要に応じて関係者との調整を行います。また、業務の進め方やAIの出力結果を誰が確認・判断するのかも明確にしておきます。

あわせて、生成AIに入力してよい情報や、人が確認するタイミングなどの社内ルールも確認しておきます。ルールが決まっていない場合は、ロードマップの中に「ルールを整える時期」を組み込み、業務を広げる前に必要な準備を進められるようにしましょう。

AI活用ロードマップの作り方5ステップ

前提が整理できたら、実際にロードマップを作ります。次の5つのステップで進めます。

ステップやることできあがるもの
1. 候補業務を洗い出す整理した業務の中から、AIを活用できそうな業務を候補として選ぶ候補業務の一覧
2. 優先順位をつける候補業務を「月間件数×1件あたりの作業時間」で比べ、取り組む順番を決める優先順位をつけた一覧
3. 段階に分ける優先順位をもとに、どの業務をどの段階で進めるかを割り振る段階ごとの対象業務
4. ルールと確認方法を決める人が確認するポイントや例外時の対応を、業務をまたいで共通の形にする共通の進め方
5. 記録と見直しの時期を決める効果を何で測るかと、ロードマップを見直す時期を決める記録の項目と見直しの予定

ステップ1・2:候補を選び、順番を決める

候補業務は、「件数が多い」「手順が決まっている」「間違えても取り返しがつく」の3つの条件で選びます。候補が複数あれば、「月間件数×1件あたりの作業時間」で月間の総作業時間を比べます。そのうえで、AIに任せられる範囲や間違えたときの影響も考慮し、優先順位を決めます。

選び方の詳しい考え方は、以下の記事で解説しています。

ステップ3:段階に分ける

順番が決まったら、業務を段階に割り振ります。ポイントは、1つ目の業務で作った型をそのまま使える業務を、次の段階に置くことです。たとえば、請求書の照合で型ができたなら、同じように書類とデータを照合する業務は次の候補になります。

反対に、複数のシステムをつなぐ業務や、部門をまたぐ業務は調整に時間がかかるため、後の段階に置きます。

なお、決まった手順を繰り返す業務の中には、AIエージェントよりもRPAの方が向いているものもあります。使い分けの考え方は、以下の記事で解説しています。

ステップ4・5:共通の進め方と見直しの時期を決める

対象業務が増えると、業務ごとに確認の手順や記録の仕方が違ってきます。人が確認するポイント、例外が出たときの引き継ぎ方、記録する項目などは、できるだけ共通の形にしておきます。

最後に、効果を何で測るのかと、ロードマップを見直す時期を決めます。処理件数、作業時間、人が確認した件数などを記録しておけば、導入効果や運用状況を振り返り、次の段階に進むかどうかを判断しやすくなります。

1業務から広げる3段階のロードマップ例

5つのステップで作るロードマップの一例を、3つの段階で示します。時期はあくまで目安です。対象業務の数や社内の体制によって、進める速さは企業ごとに異なります。期間どおりに進めることよりも、各段階で運用が安定し、効果を確認できてから次へ進むことを重視しましょう。

段階時期の目安取り組み目指す状態
第1段階開始から3か月4週間で立ち上げ、1業務で運用の型を作るAIに任せる範囲、人が確認するポイント、例外時の対応が整理され、2つ目の業務に取りかかれている
第2段階開始から半年同じ部門内の別の業務へ広げる第1段階の型を使い、複数の業務を同じ進め方で運用できている
第3段階開始から1年部門をまたいだ活用やシステム連携を検討する複数の業務やシステムをつないだ活用を、効果を確認しながら検討できる

第1段階:1業務で運用の型を作る(開始から3か月が目安)

最初の段階では、1つの業務で運用を安定させることに集中します。最初の4週間を目安に立ち上げ、その後も例外への対応や確認の手順を見直しながら、運用の型を固めていきます。型が固まってきたら、この段階のうちに2つ目の業務の準備を始めても構いません。

この段階で大切なのは、導入前と導入後の数字を記録しておくことです。次の段階で対象を広げるときに、社内へ効果を説明する材料になります。

第2段階:同じ部門内で広げる(開始から半年が目安)

第1段階の型を使って、同じ部門の別の業務へ広げます。書類の照合で型ができたなら、別の種類の書類の照合へ、というように、進め方を流用できる業務から選ぶのが近道です。

同じ部門内であれば、確認する人やルールも共通にしやすく、第1段階よりも短い期間で立ち上げられることが多くなります。

第3段階:部門をまたいで連携する(開始から1年が目安)

複数の業務で安定して運用できるようになったら、効果や必要な体制を確認したうえで、部門をまたいだ活用やシステム同士の連携を検討します。たとえば、経理と営業管理の数字を照らし合わせる業務や、複数のシステムからデータを集めて確認する業務などです。

この段階は関係者が増えるため、第1・第2段階で作った共通の進め方と、記録してきた効果の数字が役に立ちます。

当社アイディーエスでのAI活用の広げ方

業務の棚卸しからAI化する業務を選び、管理部門のAI活用を広げる手順

当社では、まず管理部門の担当者に困っていることを聞き、手順が決まっていて効果が見えやすい業務からAI活用を始めました。小さな成果が出るにつれて、管理部門からの相談や要望が増えていきました。そこで、要望に一つずつ応えるだけでなく、効果の大きい業務から提案できるように、管理部門の業務の棚卸しに取り組んでいます。ここでは、次に取り組む業務をどのように選んでいるのかを紹介します。

管理部門の業務を洗い出し、一覧にまとめる

まず、業務一覧や年間スケジュール、日々の作業記録など、手元にある資料から管理部門の業務を集め、1つの一覧にまとめました。

資料ごとに同じ業務が違う名前で書かれていることもあったため、名前をそろえながら整理しました。一覧にすることで、日々の細かな業務まで含めた全体像を把握できるようになりました。

業務ごとにおおよその年間工数を見積もる

次に、各業務に頻度と1回あたりの作業時間をつけ、年間の工数を見積もりました。作業記録が残っていない業務は、似た業務の平均で仮置きしています。

ここでは正確さよりも、どの業務にどれくらいの時間がかかっているのか、全体の傾向をつかむことを優先しました。

まだAI化していない業務から、AI化できそうな業務を割り出す

すでにAIや仕組みで改善した業務には一覧の上で印をつけ、まだ手をつけていない業務と分けました。そのうえで、手つかずの業務の中から、手順が決まっているか、判断が少ないか、間違えたときの影響はどうかを確認し、AI化できそうな業務を割り出しました。

工数の多さや自動化のしやすさを踏まえて、次の対象を選ぶ

割り出した業務を年間工数の多い順に並べ、自動化のしやすさも確認しながら、取り組む業務を選びます。

「まだ手をつけていない業務から」とだけ考えると、作業時間の小さい業務が選ばれることもあります。年間工数を目安にしながら、自動化のしやすさも確認することで、効果が見込める業務から取り組めるようにしています。

改善に取り組み、仕組みの実行回数を記録する

選んだ業務の改善に取り組み、作った仕組みごとに実行回数を一覧に集めています。どの仕組みがどれくらい使われているのかを把握できるため、活用状況の確認や、社内への説明に役立ちます。

実行回数を使った効果の測り方は、以下の記事で解説しています。

当社では、特に業務の洗い出しや優先順位づけ、活用状況の記録から取り組んでいます。ロードマップの作り方と対応させると、次のとおりです。

ロードマップの作り方当社での取り組み
候補業務を洗い出す資料から管理部門の業務を洗い出し、1つの一覧にまとめた
優先順位をつけるAI化できそうな業務を割り出し、年間工数の多い順に並べた
段階に分ける自動化の余地が大きい業務を選び、順番に着手している
記録と見直しの時期を決める仕組みごとの実行回数を一覧に集め、活用状況を確認している

作業記録が残っていない業務については、担当者に話を聞いたり、一定期間の作業を記録してもらったりしながら、少しずつ一覧を埋めています。

最初から完璧な一覧を作るのではなく、分かる範囲で全体を見える化し、そこから次の対象を選んでいくことが、AI活用を広げる土台になっています。

ロードマップが形骸化しないための注意点

ロードマップは作って終わりではありません。作ったまま使われなくなることを防ぐために、3つの点に注意します。

1. 計画を細かく作りすぎない

最初から1年分の計画を細かく決めても、運用を始めると想定外のことが起きます。細かく決めるのは次の段階までにとどめ、その先は「この方向に広げる」程度にしておく方が、状況に合わせて見直しやすくなります。

2. 見直しの時期を決めておく

「必要になったら見直す」としておくと、見直されないまま時間が過ぎてしまいます。3か月ごとなど、見直す時期をあらかじめ決めておきます。見直しでは、記録した効果の数字に加え、運用が安定しているかも確認し、次の段階に進むか、今の段階を続けるかを判断します。

3. 現場の担当者を巻き込む

ロードマップを推進役だけで作ると、現場の実態と合わなくなります。対象業務の担当者に、業務の手順や例外のパターンを聞きながら作ることで、実際に動かせる計画になります。担当者が計画を知っていれば、次の段階への協力も得やすくなります。

よくある質問(FAQ)

AI活用ロードマップは、最初から1年分すべて決める必要がありますか?

最初から1年分の計画を細かく決める必要はありません。業務の洗い出しと優先順位づけを行い、まずは次の段階までの計画を作ります。その先は大まかな方向性を決めておき、運用状況や効果を確認しながら見直していくと、実態に合った計画にできます。

ロードマップは誰が作るべきですか?

推進役が中心になって作りますが、対象業務の担当者を必ず巻き込みます。業務の手順や例外のパターンは、実際に業務を行っている担当者がいちばんよく知っているためです。部門をまたぐ段階では、関係する部門の責任者にも計画を共有しておきます。

最初の1業務がうまくいっていない場合でも、ロードマップを作るべきですか?

まずは最初の1業務の運用を安定させることを優先します。型ができていない状態で対象を広げると、同じ問題がほかの業務でも起きやすくなります。ただし、次に広げる候補を整理しておくこと自体は、最初の1業務の進め方を見直すきっかけにもなります。

ロードマップの効果はどのように測ればよいですか?

業務ごとに、導入前と導入後の作業時間、処理件数、人が確認した件数などを記録します。あわせて、計画どおりに段階を進められているかも確認します。数字で効果を示せれば、次の段階に進むときに社内の理解を得やすくなります。

まとめ

  • AI活用を組織全体に広げるには、場当たり的に進めず、ロードマップを作ることが重要です。
  • 作成前に、業務・目標・体制の3つを整理します。
  • 候補業務の洗い出しから記録・見直しまで、5つのステップでロードマップを作ります。
  • 「1業務で型を作る」「同じ部門内で広げる」「部門をまたいで連携する」の3段階で、効果を確認しながら対象を広げます。
  • 計画を細かく作り込みすぎず、見直しの時期を決め、現場の担当者を巻き込んで運用します。

2027年に向けてAI活用を広げていくなら、まずは今動いている業務を振り返り、最初の1業務で作った型を次の業務にどう活かすかを考えるところから始めてみてください。

AIエージェントは、人を置き換えるためだけのものではありません。人が行っている定型的な作業を補助・代行し、担当者が本来注力すべき判断や調整に時間を使えるようにするための仕組みとして活用できます。

AI活用を広げる近道は、最初の1業務で作った型を、効果を確認しながら段階的に次の業務へ活かしていくことです。

「次にどの業務へ広げればよいか相談したい」「自社のAI活用ロードマップを一緒に整理してほしい」という方は、お気軽にお問い合わせください。業務の棚卸しからロードマップの作成、各業務の立ち上げまでをご支援いたします。

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